デジタルデザインの世界には、初めて触れる人を戸惑わせる専門用語がたくさんあります。でも、言葉の意味を知るだけでデザインの面白さや仕組みがずっと分かりやすくなるのです。特に親子で一緒に学べば、単なるパソコン作業がちょっとした「ものづくり」の体験に変わります。ここでは、現役デザイナーが「とにかく大事!」と思う基礎用語を10個選んで解説します。子どもでもイメージしやすいように、専門用語をできるだけ噛み砕いて説明しますので、お父さん・お母さんもぜひ一緒に楽しんでください。
レイヤー
「レイヤー」は、デザインソフトで扱う“透明な層”のようなものです。背景やイラスト、テキストなど、要素ごとに別々のレイヤーを重ねることで、後から編集や修正がしやすくなります。何枚も重ねて1枚の絵を作るという感覚は、まるで半透明のシートを重ねるコラージュ遊びに近いもの。親子で作業するときは、レイヤーごとに名前を付けたり、不要になったレイヤーを非表示にしたり、といったソフトの機能で遊んでみましょう。「背景レイヤーを赤に変えると雰囲気がガラッと変わるよ」なんて発見もあります。レイヤーを使いこなすとデザインの自由度がぐっと増えるので、絶対に覚えておきたい用語です。
ピクセル
「ピクセル」はデジタル画像を構成する最小の点です。スマホやパソコンの画面は、赤・緑・青の光が一粒ずつ敷き詰められたピクセルの集まりでできています。これが拡大すればブロックのように見え、子ども向けの“ドット絵”をイメージしやすいでしょう。解像度の高いディスプレイほどピクセルが小さくなるため、細かい文字でもクッキリ見えます。一方で、解像度の低い画像を無理に拡大すると、ピクセルの粒が見えてギザギザになってしまいます。写真を大きく飾りたいときには、高めの解像度で撮影したデータを使うと美しく見えますよ。
ベクター
「ベクター」は数式で描く画像形式です。ピクセルの並びではなく、“座標と線”を基にして描いているため、いくら拡大しても線がギザギザになりません。たとえばロゴやイラストを大きく印刷したいときはベクター形式が便利です。Adobe Illustratorなどが代表例で、思い切って100倍に拡大しても滑らかさは変わりません。写真のように色合いが複雑な素材はベクターには不向きですが、図形や文字を扱うなら最強と言っていいでしょう。お子さんが自由にお絵かきできるツールとしても、拡大縮小が自在なので楽しめます。ロゴを自作してポスターに使うなど、ちょっとしたプロ気分も味わえますね。
トリミング
「トリミング」は、写真や画像の要らない部分をザクッと切り取って必要な範囲だけにすること。背景のゴチャゴチャしたところを除きたいときなど、まずはトリミングが大活躍します。スマホの写真編集でもおなじみで、縦横比を変えたり、余計な写り込みを消したりできるのが便利。実はちょっと傾いた写真でも、一度回転して正しく整え、余ったスペースをカットすることもトリミングで可能です。余分なものを切り落とすことで、見せたい被写体を強調する効果も期待できます。親子で「この写真はどこを残したい?」と話し合って切り抜いてみると、構図の奥深さに気付くはず。
解像度
写真や画像の“細かさ”を示すのが「解像度」です。一般には1インチあたりのドット数(dpi)で表され、高いほどクッキリとした表現が可能になります。印刷に使うなら300dpi程度は欲しいところ。一方、Webサイトで使う画像は72dpiでもそこそこ見栄えします。これはパソコンやスマホの画面上で、それ以上細かくしてもほとんど違いが分からない場合が多いから。用途に合わせて適切な解像度を選ばないと、低すぎるとボヤけ、高すぎるとデータが重くなり表示に時間がかかります。特にポスターやアルバムを作るときには注意が必要です。
カラーモード(RGB/CMYK)
「カラーモード」はデジタル画像の色の仕組みを指します。まず「RGB」は光の三原色(赤・緑・青)を重ねて白に近づける加法混色方式で、画面用の色設定です。一方「CMYK」はインクの三原色シアン・マゼンタ・イエローと黒を使う減法混色で、印刷物に適しています。パソコンで作業していて、「画面では鮮やかに見えていたのに印刷したらくすんだ色になった…」なんて経験はありませんか? これはRGBとCMYKの色再現範囲の違いが原因です。ウェブ用なのか印刷用なのかで色設定を切り替えるだけでも、仕上がりのズレを減らせます。親子で赤と青のライトを重ねる実験や、絵の具を混ぜてみる遊びをすると理解が深まりやすいですよ。
タイポグラフィ
文字の形や配置をデザインする「タイポグラフィ」は、華やかなイラストや写真とはまた違った面白さがあります。フォント(書体)には雰囲気があり、角ばったゴシック体はクール、丸みのあるものは可愛い印象を与えます。さらに行間を広めに取ると読みやすくなったり、文字の大きさを統一すると整ったイメージになったり。派手な色づかいが無くても、文字だけでグッと目を引くデザインが作れることは大きな魅力です。お子さんの名前をいろんなフォントでプリントして選んでみるだけでも、「この書体はなんだか硬そう」「こっちはおしゃれ!」と盛り上がります。意外と奥深いので、親子でどんなフォントが好きか話す機会も増えそうですね。
UI/UX
「UI」はユーザーインターフェース、「UX」はユーザーエクスペリエンスという言葉で、アプリやウェブサービス、あるいは製品全体の“使い心地”を考えるときに欠かせません。UIは画面のレイアウトやボタン配置など“目に見える使い勝手”を指し、UXはそこから得られる満足感や体験を含めた“目に見えない感覚”も含みます。良いUIがあるから良いUXが生まれる、といっても過言ではありません。例えば自販機で「ボタンの位置がわかりやすく、すぐに買えたら快適だね」というのがUIの評価。それを通じて「この自販機は使いやすいから好き!」と感じるのがUXです。子どもにとっては、ゲームやアプリの操作性を例にすると分かりやすいかもしれません。
ホワイトスペース(余白)
デザインで意外に大切なのが「ホワイトスペース」、つまり“空白”の部分です。詰め込みたくなる気持ちをこらえ、あえてスペースを残すと、情報を見やすく整理できたり高級感を生み出したりする効果があります。例を挙げると、アップルの広告やウェブサイトは、必要最低限の要素だけが配置され、潔いほど空白があるのが特徴。これがデザインをスッキリ見せる秘訣です。親子で資料を作るとき、最初はついゴチャゴチャと文字や絵を並べてしまいがちですが、余白を意識してみると一気に読みやすくなります。ちょっとした勇気がいりますが、“引き算のデザイン”を覚えると、初心者でも上級者っぽいレイアウトが実現できます。
アイソメトリックデザイン
最後は「アイソメトリックデザイン」。三次元のものを斜め上から見下ろしたように描く手法で、イラストやインフォグラフィックでよく使われます。左右と奥行きの方向が等しい角度に配置されるため、パースのように奥が小さくなることがなく、全体を平等に見せられる点が特徴です。地図や建物の間取りを見やすく説明するときにも便利で、最近はWebサービスの紹介ページでも、おしゃれなアイソメ図をあしらったデザインが増えています。お子さんといっしょに積み木を並べたシーンを絵にしてみたり、紙に定規で斜めの線を引いて立体っぽく描いてみたりすると、意外とすぐに立体感を表せます。「斜め上から見るとこんな感じか」とわかると楽しい発見があるはずです。
まとめ
ここで紹介した10の専門用語は、どれもデジタルデザインの基礎となる概念です。最初は「英語ばかりでよく分からない」と感じるかもしれませんが、意味をつかめば一気にデザインが面白くなるので、親子で楽しみながら使い方を試してみてください。「写真をトリミングして余白を作ると印象が変わるんだ!」「UIが見やすいとストレスなく操作できて、UXも良くなるんだね」など、ちょっとした気づきが積み重なると“見る目”が育ちます。絵や写真が好きなお子さんなら、レイヤーやベクターで自由に作品を作ってみるのも良いでしょう。理科の実験が得意なら、RGBとCMYKの違いを実際に色を混ぜる遊びで学べばワクワクが増します。ぜひ日常の中でこれらの用語を使いこなし、デザインの世界を覗いてみてください。さらに興味が深まれば、プロの現場でどう応用されているかを調べてみるのもおすすめ。これから先、新しいデザインソフトや技術が登場しても、ここで挙げた基本用語を理解しているとスムーズに取り組めます。ぜひ親子でクリエイティブな一歩を踏み出してみてください。