子どものデジタルデザイン、どうほめる?創造力をぐんぐん伸ばす声かけの秘訣

近年、タブレットやパソコンを使って絵を描いたり、ゲームを作ったりする子どもたちが増えています。デジタルツールは、子どもたちの豊かな想像力を形にするための新しいキャンバスであり、無限の可能性を秘めた遊び道具です。オンラインのデジタルデザインスクールなどで、本格的にスキルを学ぶ子も少なくありません。

子どもが夢中になって作り上げた作品を目にしたとき、保護者としてその頑張りを認め、さらなる意欲を引き出してあげたいと思うのは自然なことです。しかし、「すごいね!」「上手だね!」といった言葉だけでは、子どもの創造力を本当に伸ばすことにつながるのでしょうか?どんな言葉が子どもの心に響き、次への一歩を後押しするのか、悩む方も多いのではないでしょうか。

この記事では、子どもの創造性を豊かに育むための、効果的な「ほめ方」や関わり方のヒントをご紹介します。デジタルデザインに限らず、お子さんのあらゆる創作活動において役立つ考え方ですので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

ほめ言葉のパワー、使い方次第で効果が変わる?

「ほめる」という行為は、子育てにおいてとても大切な関わり方の一つです。適切にほめられることで、子どもは「自分は認められている」「見てくれている人がいる」と感じ、それが自信や自己肯定感を育む土台となります。特に、信頼する親からの承認は、子どもの心の安定に繋がり、「次も頑張ろう!」という前向きな意欲を引き出す力を持っています。

脳科学的にも、ほめられると脳内で「ドーパミン」という神経伝達物質が放出されることが分かっています。ドーパミンは快感や意欲に関わるため、ほめられた行動を「またやってみたい」と感じさせ、努力や挑戦を促す効果が期待できます。このように、ほめ言葉は子どもの成長にとって、まさに「栄養」のような役割を果たすのです。

しかし、その一方で、ほめ方によっては逆効果になってしまう可能性も指摘されています。例えば、「〇〇ちゃんは本当に絵の才能があるね!」のように、結果や生まれ持った能力ばかりをほめていると、子どもは「才能がないと思われたくない」「失敗してがっかりさせたくない」と感じるようになり、難しい課題への挑戦を避けるようになってしまうことがあります。確実に成功できる簡単なことばかりを選ぶようになり、かえって成長の機会を失ってしまうのです。

また、常にほめられることを期待する「ほめられ依存」の状態に陥り、誰かにほめてもらうためだけに行動するようになる可能性もあります。そうなると、自分の内側から湧き出る「これが好き!」「もっと知りたい!」という純粋な興味や関心が薄れ、創造活動そのものを楽しめなくなってしまうかもしれません。

さらに、ほめ言葉が過剰だったり、本心からではなかったりすると、子どもはその不自然さや操作的な意図を敏感に感じ取り、親への不信感につながることもあります。

このように、ほめ言葉は子どもの心に大きな影響を与える「両刃の剣」と言えます。その力を最大限に活かすためには、どんなほめ方が子どもの健やかな成長を促すのかを理解し、状況に応じて使い分けていくことが大切です。

結果よりも「プロセス」に注目!成長を促すほめ方

では、具体的にどのようなほめ方が子どもの創造性を伸ばすのでしょうか?多くの専門家が指摘するのは、「結果」だけでなく、作品を生み出すまでの「プロセス」に注目することの重要性です。

スタンフォード大学の心理学者キャロル・S・ドゥエックは、「人の能力は努力や経験によって伸ばせる」と考える「成長マインドセット」を持つことが、挑戦意欲や成果に繋がることを明らかにしました。そして、この成長マインドセットを育む鍵こそが、「プロセス」をほめることにあると言います。

ドゥエックの研究によると、「頭がいいね」のように知能や才能をほめられた子どもたちは、失敗を恐れて簡単な課題を選び、難しい問題に直面すると意欲を失いやすい傾向が見られました。一方、「よく頑張ったね」「そのやり方、いいね!」のように努力や工夫、試行錯誤の過程をほめられた子どもたちは、難しい課題にも積極的に挑戦し、粘り強く取り組み、最終的に成績も向上する傾向が見られたのです。

これを子どものデジタルデザイン作品への声かけに応用してみましょう。「すごい作品ができたね!」(結果)と伝えるだけでなく、子どもが制作中に見せた具体的な行動や努力に目を向けてみてください。

  • 「このキャラクターの動きを滑らかにするために、何度も試行錯誤していたね」 (粘り強さ・試行錯誤)
  • 「背景の色をたくさん試して、一番しっくりくる色を選んだんだね」 (工夫・選択)
  • 「このツールを使いこなすために、チュートリアル動画を一生懸命見ていたね」 (学習プロセス)
  • 「プログラムの難しい部分も、諦めずに最後まで集中して取り組んだね」 (集中力・努力)
  • 「このキャラクターデザイン、色々なアイデアをスケッチしてから決めたんだね」 (戦略・計画性)

このように、作品が完成するまでに見られた努力、使った戦略、工夫した点、学んだこと、粘り強さなどを具体的に言葉にして伝えることで、子どもは「自分の頑張りを見ていてくれたんだ」と感じ、それが「次も挑戦してみよう」という意欲に繋がります。結果が思うようにいかなかったとしても、その過程での頑張りが認められることで、子どもは失敗を恐れずに新しいことにチャレンジする勇気を持つことができるのです。

もちろん、素晴らしい作品ができた時にその出来栄えを認めることも大切ですが、「才能がある」「天才だ」といった言葉は、かえってプレッシャーを与えたり、失敗への恐れを生んだりする可能性があるため、避けた方が賢明でしょう。それよりも、その素晴らしい結果が、どのような努力や工夫によってもたらされたのかを具体的に伝える方が、子どもの成長マインドセットを育む上でより効果的です。

「すごい!」だけじゃない、伝わるほめ方の工夫

プロセスをほめることと合わせて、ほめ言葉をより効果的に伝えるためのいくつかの工夫があります。

まず大切なのは、「具体的に伝える」ということです。「上手だね」「すごいね」といった漠然とした言葉は、子どもにとっては「何がどう良かったのか」が分かりにくく、心に響きにくいことがあります。

  • 「このロボットの関節部分、細かいところまでよくデザインされているね」
  • 「キャラクターの表情が豊かで、楽しそうな気持ちが伝わってくるよ」
  • 「色の組み合わせがユニークで、見ていてワクワクするね」

このように、作品のどの部分に感心したのか、何を見てそう感じたのかを具体的に言葉にすることで、子どもは自分の工夫や表現が伝わったことを実感でき、自信を持つことができます。

次に、「誠実さ」も重要です。子どもは、大人が本心から言っているのか、それとも口先だけなのかを敏感に感じ取ります。心から「いいな」と思えないときに無理にほめようとすると、かえって信頼関係を損なう可能性もあります。本当に感心した点、努力を認める点を見つけて、正直な気持ちを伝えることを心がけましょう。

そして、「タイミング」も意識したいポイントです。特に幼い子どもの場合は、良い行動や努力が見られた直後にほめることで、何が認められたのかが分かりやすくなります。

また、絶対に避けたいのが「他の子どもと比較する」ことです。「〇〇くんより上手に描けたね」「〇〇ちゃんはまだできないのにすごいね」といった比較は、一時的に子どもの優越感を満たすかもしれませんが、他者との競争意識や劣等感を生み出し、健全な自己肯定感の育ちを妨げる可能性があります。

もし比較するのであれば、その子自身の「過去」と比べて成長を認めましょう。

  • 「前よりも複雑なプログラムが組めるようになったね!」
  • 「1ヶ月前に描いた絵と比べると、色の使い方がすごく豊かになったね」

このように、本人の成長に焦点を当てることで、「努力すればできるようになる」という成長マインドセットをさらに強化することができます。

自分の気持ちを伝える際には、「わたしメッセージ」を使うのも有効です。「(あなたは)すごいね」という評価的な言い方ではなく、「(わたしは)この色の組み合わせ、見ていて楽しい気持ちになるよ」のように、自分の感情や受け止め方を伝えることで、評価されているというプレッシャーを与えずに、肯定的な気持ちを伝えることができます。

問いかけで引き出す、子どもの「思い」と「発見」

ほめ言葉を伝えるだけでなく、「質問」を通して子どもとの対話を深めることも、創造性を刺激する上で非常に効果的です。単に評価を伝えるのではなく、子どもの作品や制作プロセスに純粋な好奇心を持って問いかけることで、さまざまなメリットが生まれます。

使うのは、「はい」「いいえ」で答えられない「オープン・クエスチョン(開かれた質問)」です。

  • 「この作品で、一番こだわった(工夫した)のはどんなところ?」
  • 「このアイデアは、どうやって思いついたの?」
  • 「作っていて、一番楽しかった(難しかった)のはどこかな?」
  • 「もしもう一度作るとしたら、何か変えてみたいところはある?」
  • 「このキャラクターは、どんな性格だと考えてデザインしたの?」

こうした質問は、子ども自身が自分の制作プロセスや作品に込めた思いを振り返り、言葉にする良い機会となります。自分の考えを整理し、表現する練習にもなりますし、親が気づかなかった子どもの意図や隠れた努力を発見するきっかけにもなるでしょう。

また、質問を通して対話することで、親が一方的に評価するのではなく、「あなたの作品や考えに関心があるよ」というメッセージが伝わります。子どもは自分の視点やアイデアが尊重されていると感じ、安心してさらに探求を進めることができます。何より、子ども自身が自分の作品のどの部分を誇りに思っているのか、何に価値を感じているのかを知ることで、より的を射た、心に響く声かけができるようになるでしょう。

評価を与えるのではなく、子どもの内なる世界に寄り添い、共感的な対話を心がけることが、創造的な探求心を育む鍵となります。

クリエイターも実践!「自分らしさ」を尊重する関わり方

デザイナーやアーティストなど、日々創造的な仕事をしているプロフェッショナルたちは、子どもの創造性をどのように捉え、どう関わっているのでしょうか。彼らの視点には、私たちが学ぶべきヒントがたくさん詰まっています。

多くのクリエイターが口を揃えて言うのは、技術的な「上手さ」よりも、子ども一人ひとりが持つ「自分らしさ」やユニークな視点を尊重することの重要性です。彼らは子どもの作品を、単なる未熟な習作としてではなく、その子ならではの世界観が表れた価値ある「自己表現」として捉え、大人の基準で安易に評価したり、修正を加えたりすることをしません。むしろ、その自由な発想や大胆な表現に、時には「嫉妬」さえ感じると言います。

また、彼らも教育心理学の専門家と同様に、完成した「結果」だけでなく、アイデアを探し、色々な方法を試し、問題にぶつかりながら解決していく「プロセス」そのものに価値を見出しています。創り出す行為自体が、子どもにとっては最高の「遊び」であり「学び」であると理解しているのです。

そのため、大人の役割は、具体的な指示を与えて導く「教師」ではなく、子どもの内側から湧き出る「やってみたい!」という気持ちを尊重し、その活動を側面からサポートする「ファシリテーター」であるべきだと考えています。子どもが安心して自分の世界を探求できるよう、口出しせずにじっくり見守ること、そして大人自身が楽しんで何かを創り出す姿を見せることも、良い刺激になると言います。

クリエイティブな専門家たちのこうした直感的なアプローチは、心理学や教育学が示す「成長マインドセット」「内発的動機づけ」「心理的安全性」といった概念と深く響き合っています。分野は違えど、子どもの創造性を効果的に育むための本質的な原則は共通していると言えるでしょう。

彼らの視点から私たちが学べるもう一つの大切なことは、子ども時代のユニークな感性を「保護する」という意識です。大人の基準に合わせようとしたり、社会のルールに早く適合させようとしたりするのではなく、その子だけが持つ瑞々しい視点や自由な発想力を、できるだけ長く大切に守り育てていきたい、という考え方です。スキルを伸ばすことと同時に、その子本来の創造的な声を尊重し、大切に育む視点を持つことが重要なのかもしれません。

言葉だけじゃない!創造性を育む「環境」の力

子どもたちの創造性は、言葉による声かけだけで育まれるわけではありません。日々の生活を送る「環境」そのものが、実は非常に大きな影響を与えています。物理的なスペース、時間の使い方、手軽に使える素材、そして家族全体の関わり方…これら全てが、子どもの創作意欲を刺激したり、逆に抑制したりする要因となり得るのです。

まず考えたいのが、創造的な活動に安心して没頭できる「場所」の確保です。家の中に、たとえ小さなスペースでも良いので、「ここは自由に創作していい場所」と子どもが認識できるコーナーを設けてみましょう。デジタルデザインであれば、集中できるデスク周りや、リラックスできるソファスペースなどが考えられます。アナログな工作であれば、画材や道具がすぐに手に取れ、多少汚れても大丈夫な場所が理想的です。専用のスペースがあることで、「ここでは創造的な活動が歓迎されているんだ」というメッセージが伝わり、子どもは思い立った時にすぐに制作に取りかかることができます。

次に重要なのが、「時間」のゆとりです。スケジュールに追われず、子どもが自分のペースでアイデアを探求したり、ぼーっと空想したりできる「自由な時間」は、創造性にとって不可欠な要素です。習い事などで忙しすぎるスケジュールは、かえって子どもの自発的な探求心を奪ってしまう可能性もあります。時には、あえて「何もしない時間」を確保することも大切かもしれません。

そして、創造性を刺激する「素材」へのアクセスも重要です。デジタルデザインであれば、使いやすいペイントソフトやデザインツール、参考になる画像やフォントなどに手軽にアクセスできる環境が考えられます。アナログな活動であれば、様々な種類の紙、絵の具、粘土、廃材、自然物など、多様な素材に触れる機会を提供しましょう。異なる素材は、異なる発想や表現を引き出してくれます。これらのツールや素材が、子ども自身で簡単に見つけ、自由に使える状態になっていることがポイントです。

さらに、言葉を使わずに子どもの努力を認め、肯定感を育む強力な方法があります。それは、「子どもの作品を飾る」ことです。デジタル作品であれば、プリントアウトして壁に貼ったり、パソコンのデスクトップ画像に設定したり、家族が見る共有フォルダに保存したりするのも良いでしょう。自分の作品が大切に扱われ、目に見える形で展示されているのを見ることは、「あなたのしたことには価値がある」「あなたはこの家族の大切な一員だ」という強力なメッセージとなり、子どもの自己肯定感を高めます。来客時に自然と作品が話題に上り、親以外の人から肯定的なフィードバックを得る機会にも繋がるかもしれません。

もちろん、作品そのものについて親子で「対話」することも大切です。「この部分はどうやって作ったの?」「何を感じながら描いていたの?」など、評価ではなく純粋な関心を持って質問し、子どもの話に耳を傾けましょう。

加えて、美術館や博物館を訪れたり、自然の中で遊んだり、様々なジャンルの本を読んだり、音楽を聴いたりすることも、子どもの感性を豊かにし、新しいアイデアの源泉となります。多様な文化や表現に触れることは、子どもの視野を広げ、創造的な思考を刺激するでしょう。

このように、創造性を育む環境とは、単に物理的なスペースや物を与えることだけではありません。子どもが安心して探求し、試行錯誤できる時間的なゆとり、精神的な余裕、そして生み出されたものを尊重し、喜びを分かち合う家族の温かいまなざしがあってこそ、その環境は真に意味を持つのです。

失敗しても大丈夫!挑戦を支える「安心感」の土台

子どもが持っている創造性を存分に発揮するためには、スキルや知識、良い環境があるだけでは不十分です。最も大切な土台となるのが、「心理的安全性」、つまり「失敗しても大丈夫」と感じられる安心感です。

家庭における心理的安全性とは、子どもが自分の考えや感情を、たとえそれが未熟であったり、一般的でなかったりしても、気兼ねなく表現できる状態を指します。新しいことに挑戦してうまくいかなくても、自分の弱さを見せても、罰せられたり、馬鹿にされたり、愛情を失ったりする心配がないと感じられる環境です。ありのままの自分が受け入れられ、守られているという感覚と言い換えても良いでしょう。

この安心感は、創造性を解き放つ上で決定的な役割を果たします。なぜなら、創造的な活動とは、本質的に「未知なるものへの挑戦」であり、「失敗のリスク」を伴うからです。プログラムがうまく動かない、デザインが思った通りにならない、といった試行錯誤はつきものです。心理的安全性が確保された環境では、失敗した場合の心理的なダメージが少ないと感じられるため、子どもはより大胆に新しいアイデアを試し、型にはまらない表現を探求し、たとえ失敗してもそこから学ぼうとする意欲を持つことができます。

逆に、失敗を厳しく責められたり、親の期待に応えられないとがっかりされたりする経験が続くと、子どもは「失敗=悪いこと」と捉え、リスクを取ることを恐れるようになります。間違いを指摘されるのを避けるために、無難なアイデアしか出さなくなったり、挑戦そのものを諦めてしまったりするかもしれません。

では、家庭でこの「心理的安全性」を育むためには、親はどのように関われば良いのでしょうか?

まず基本となるのは、「傾聴」「承認」「共感」の姿勢です。子どもが話しかけてきたら、できるだけ作業の手を止め、目を見て、話を最後まで注意深く聞きましょう。すぐにアドバイスや否定をするのではなく、「そう感じたんだね」「それは大変だったね」と、まずは子どもの気持ちを受け止め、共感を示すことが大切です。たとえ子どもの意見に同意できない場合でも、その感情自体は否定せずに認めましょう。

そして、「不完全さを受け入れる」姿勢も重要です。子どもが何かを達成できなかったり、失敗したりしたときに、結果だけを責めるのではなく、その挑戦自体を認め、「次はどうすればうまくいくか」を一緒に考える機会と捉えましょう。時には、親自身の失敗談や、それをどう乗り越えたかを話すことも、「完璧でなくてもいいんだ」というメッセージを伝え、子どもを勇気づけることに繋がります。困難に直面したときに、すぐに手助けするのではなく、子ども自身が乗り越えるのを見守ることも、レジリエンス(回復力)を育む上で大切です。

もちろん、修正が必要な点を伝えるべき場面もあります。その際は、子どもの人格を否定するような言い方(例:「どうしてあなたはいつもそうなの?」)は避け、「〇〇の部分をこうすると、もっと良くなるかもしれないね」のように、具体的な行動や改善点に焦点を当てて、一緒に解決策を考えるスタンスで伝えましょう。「わたしメッセージ」を活用し、穏やかな口調で話すことを心がけてください。

何よりも大切なのは、子どもの成果や出来に関わらず、常に温かいまなざしと愛情を持って接することです。笑顔や優しい声かけ、抱きしめるといった日々の小さな触れ合いを通して、「どんなあなたでも大切だよ」という無条件の肯定的なメッセージを伝え続けることが、子どもの心の安全基地を築く上で最も重要な基盤となります。

この心理的安全性の土台があってこそ、これまで述べてきた「プロセスをほめる」「問いかける」といった他の関わり方も、より効果的に機能するのです。

子どもの成長に合わせたアプローチ

これまで見てきたように、子どもの創造性を伸ばす関わり方には様々なポイントがありますが、もう一つ忘れてはならないのが、子どもの「発達段階」に合わせてアプローチを調整していく必要があるということです。年齢によって、物事の理解の仕方、感情の捉え方、興味の対象などが変化していくため、効果的な声かけや関わり方も変わってきます。

幼児期(およそ0歳~5歳)

この時期は、まだ複雑な言葉の意図を理解するのが難しく、物事を感覚的に捉える段階です。

  • 乳児期/歩行期(0~2歳): 「できたね!」「すごいね!」といったシンプルな言葉と、笑顔、拍手、ハグなど、全身で喜びを表現することが効果的です。行動の直後にほめることで、「嬉しい」という気持ちと行動が結びつきやすくなります。まずは「世界は安全で、探求することは楽しい」という基本的な信頼感を育むことが目標です。「見て見て!」というアピールには、積極的に応えてあげましょう。行動をそのまま言葉にする「ブロック積んでるね!」といった描写的な声かけも有効です。
  • 就学前期(3~5歳): 少しずつ「頑張ったね」「〇〇しようとした気持ちが偉いね」といった努力や意欲を認める言葉かけを取り入れていきます。ただし、まだ具体的な言葉で伝えることが大切です。「おもちゃを順番に使えたね、優しいね」「靴を自分で履こうと頑張ったね」のように、分かりやすい行動をほめましょう。作品について「これは何?」「どうやって作ったの?」と簡単な質問を投げかけるのも良いでしょう。言葉の裏にある本音にも敏感になってくるので、誠実な態度で接することが重要になります。思い通りにいかずに癇癪を起こすこともあるかもしれませんが、その気持ちに寄り添い、受け止めてあげることが大切です。結果の上手い下手よりも、まずやってみようとしたこと、楽しんで参加したことを認めましょう。

学童期(およそ6歳~12歳以上)

小学校に入ると、思考力や社会性が発達し、より複雑なことを理解できるようになります。

  • 小学校低学年(6~8歳): 引き続き、プロセスや努力、工夫をほめることを中心に据えますが、より具体的に、課題と関連付けたフィードバックが有効になります。「算数の問題で、繰り上がりの計算を間違えずにできたね」「この絵、前よりも細かいところまで描けるようになったね」など、スキルの向上や粘り強さを具体的に認めましょう。友達との比較や競争意識も芽生えてくる時期なので、他者比較ではなく、本人の成長を評価する声かけを意識することがより重要になります。「どうしてこの方法を試してみようと思ったの?」といったオープン・クエスチョンで、自分の考えを振り返るきっかけを作るのも良いでしょう。
  • 小学校中学年・高学年(9歳以上): 抽象的な思考力や、自分自身を客観的に見る力(自己評価能力)が高まってきます。作品や課題について、「なぜそう考えたのか」「どんな戦略を使ったのか」「失敗から何を学んだか」など、より深い対話を持つことができます。レジリエンス(困難から立ち直る力)や、問題解決能力そのものをほめることも有効です。一方で、「君は才能があるから」といった安易な能力への言及は、成長マインドセットの観点から避けるべきです。自分で考えて行動したいという自律性への欲求も高まるため、子どもの意見や考えに真摯に耳を傾け、尊重する姿勢がますます重要になります。特に「10歳の壁」とも言われる自己肯定感が揺らぎやすい時期には、意識的にその子の良さや頑張りを認め、励ます関わりが支えになるでしょう。

このように、子どもの発達段階に合わせてほめ方や関わり方を調整していくことで、その時々の子どもの心に響きやすくなり、より効果的に成長をサポートすることができます。大切なのは、年齢の目安に囚われすぎず、目の前の子どもの個性や状況をよく観察し、その子に合ったアプローチを見つけていくことです。

まとめ:今日からできる、創造性を育む関わり方

子どものデジタルデザイン能力や創造性を伸ばしたいと願うとき、私たち大人ができることはたくさんあります。この記事でご紹介したポイントを、改めて整理してみましょう。

  • 結果だけでなく「プロセス」をほめる: 努力、工夫、挑戦、学び、粘り強さに注目する。
  • 具体的に、誠実に、タイミング良く: 漠然とした言葉ではなく、観察に基づいた具体的な言葉で、心からの気持ちを伝える。
  • 比較しない: 他の子と比べるのではなく、その子自身の過去の成長を認める。
  • 問いかけ、耳を傾ける: 好奇心を持って質問し、子どもの考えや感情を引き出し、内省を促す。
  • 安心できる環境を作る: 自由に表現し、失敗を恐れずに挑戦できる「心理的安全性」を確保する。
  • 創造性を刺激する環境を整える: 活動しやすいスペース、時間、多様なツールや素材を用意し、作品を大切に扱う。
  • 発達段階に合わせる: 子どもの年齢や理解度に応じて、声かけや関わり方を調整する。
  • 「自分らしさ」を尊重する: 大人の基準を押し付けず、その子ならではの表現やアイデアを大切にする。

これらの関わり方は、一見すると難しく感じるかもしれません。しかし、完璧を目指す必要はありません。大切なのは、評価者として子どもを見るのではなく、その子の学びと自己表現のプロセスに寄り添い、応援する「伴走者」としての意識を持つことです。

ここでご紹介したアプローチは、デジタルデザインの分野に限らず、勉強、スポーツ、その他のあらゆる活動において、子どもの意欲、自信、そして困難に立ち向かう力を育む上で役立つ普遍的な原則です。

子どもたちは、それぞれがユニークな可能性と、素晴らしい創造力の種を持っています。その種が芽を出し、豊かに花開くかどうかは、私たち大人の関わり方にかかっています。ぜひ今日から、お子さんとのコミュニケーションの中で、これらのヒントを少しずつ試してみてはいかがでしょうか。あなたの温かいまなざしと、適切な言葉かけが、お子さんの未来を輝かせる力となることを願っています。

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